とある社労士さんと論議する場面がありましたので、ここに備忘録がてら記載します、相手の社労士さんは、俗に言われる会社側特定社労士さんだったようです。無駄な論議だったのかも知れないと反省しきりです。
朝9時から起算するのが当たり前?
会社での出勤時点でのタイムカード打刻時間が労働時間の起算時間となるかという問題なのですが、その特定社労士さんはタイムカードが出勤・退勤の時刻とする判例とは異なる判例があるから、朝9時から起算するのが当たり前と主張されます!
当事務所では、もちろん、経営者が最終判断すべき事項ですが、過去の判例からも、当事務所での見解は次の通りです。
前提としてお断りしておきますが、当事務所は、社労士として、更に司法書士として、労使双方の相談に対応しています。
タイムカードの打刻時刻をもって、特段の事情がない限りは、労働時間と見做します。
判例主義
その根拠となる判例は以下の判例です。
「原告らの時間外勤務時間数は、原告らのタイムカードに打刻されたとおりであると認めるほかはない。」
(大阪地裁1998,6,12)
「特段の事情のない限り、タ使用者側が特段の事情の反証に成功した例もあり、この場合にはタイムカードの記載どおりの労働時間は認定されません。イムカードの記載する時刻を持って出勤・退勤の時刻と推認することができる。職員の就労の始期・終期と完全に一致するものではないが、タイムカードの記載された出勤・退勤時刻と就労の始期・終期との間に齟齬があることが証明されないかぎり、タイムカードに記載された出勤・退勤時刻をもって実労働時間と認定すべきである。」
(大阪地裁1999,5,31)
従って、タイムカード打刻時間をもって、労働時間としない場合、特段の事情を会社側が立証しなくてはなりません!
時に、就業規則で、「タイムカード打刻時間をもって出勤・退勤の時刻とする」記載をしない限り、タイムカード打刻時間をもって、労働時間としないとする特定社労士もおいでのようです。
予想される就業規則の記載は、あくまでも仮想ですが、「タイムカード打刻時間をもって出勤・退勤の時刻としない」、「タイムカード打刻時間をもって出勤・退勤の時刻とせず、午前9時から午後6時が出勤・退勤の時刻」なのかも知れませんが、どうなのでしょう?
社労士が裁判において、その主張をされることで会社勝訴の判例が存在するのでしょうか?
たしかに、使用者側が特段の事情の反証に成功した例もあり、この場合にはタイムカードの記載どおりの労働時間は認定されませんでした。
アイスペックビジネスブレイン事件(大阪地判2007.4.6労判946号119頁)のような判例ですが、タイムカードによって時間が管理されていたものの、労働者が勤務時間中に競業会社の設立のための準備等、競業行為を行っていたという事案であって、タイムカード打刻時間をもって、労働時間としない場合、特段の事情を会社側が立証しなくてはならないことを裏付けているに過ぎないと思料します。
また、タイムカードでは、1ヶ月の集計から、1分単位での集計。例えば10分未満切り捨てなどして給与計算しますので、1日毎で朝9時から起算するという論理自体もどうなのでしょう??
きちんとした対策を講じる必要
もちろん、タイムカード打刻時間をもって、労働時間としないと会社が考えるなら、法令を守り、きちんとした対策を講じる必要がありますので、当事務所にご相談下さい。
残念ながら、一部の社労士さんたちがいわれるような、精神論やいままではそれで問題がない!では、対応し得ない時代が到来していますので、ご留意下さい。