登記をお引き受けする際には、印鑑証明書の記載と同一の住所、氏名を確認しています。その際、おざなりにされがちなのですが、お名前の漢字です。今回は一番多くの字体が存在するのが、「わたなべ」の「なべ」のため、ここでは例としますが、定款の記載では、「渡辺」さんであり、印鑑証明書では、「渡邊」であったとします。

 通常では、「渡辺」と書いていても、印鑑証明書や戸籍上、「渡邉」という名字の方も多いのですが、それが問題になるような場面は日常ではほとんどありません。
 正確に区別するなら、 渡邊の「」は正字体、旧字体であり、渡邉の「」は「」の俗字で、一般的に認知された異体字というものです。「辺」はあくまでも簡略化したものとされています。

 ただし官公署に提出する場合の書類となってくると少し事情がかわりますのでご留意頂けたらと思います。
時と場合によっては、「渡邊」さんのお名前を提出書類には「渡辺」と書いて提出した結果、別人扱いされてしまうというような事も実際に起こり得るのですから困りものです。名字の字体が違うだけで、つまり別人と認識される場合があるのです。

 法務局では、原則的に登記は正字でするとされています。実際には、これは法務局のデータ全体を昔の手書きのものから電子データに変換した際に、あくまでも想像ですがあまりに多い旧字、異体字の対応を簡略化する上で、登記は正字でというルールが定められた事によるように思います。

登記での正字、異体字

 印鑑証明書には「渡邉」と記載があるのに、登記簿では「渡邊」と記載がされている場合に、この渡邊さんが登記を変更する場合、これが正字と俗字の関係にあるのかを確認しなければならない事例もあります。
正字と俗字の関係にあれば、法務局では同じ漢字として判断するので、「渡邉」さんと「渡邊」さんは同一人物と考えるので、名義変更することが可能ですが、全くの別の字である場合、別人と考えるので、「渡邉」さんからの登記申請は申請権限のない者からの申請ということで却下されてしまいかねません。

 将来、なにかの際、支障がないように、電子定款作成のみを代行する場合、あらかじめ、お客様もご留意下さいませ。