テレビCMでおなじみの司法書士法人で不祥事・トラブル 続出 

「みなさまに非常に重要なお知らせがあり ます」 過払い金請求業者ですが、大手ならば安心でしょうか? 委任状捏造の疑いさえも取りざたされる今日、誠実な司法書士こそお奨めなのでは?

 「みなさんに・・」と呼びかける独特のテレビコマーシャ ルで知られる司法書士法人新宿事務所(東京・新宿、阿部亮代表)。
弁護士・司法書 士業界に空前の活況をもたらした過払い金 バブルの中で急成長、今やその分野では最 大手と目される事務所だが、同事務所をめ ぐってはここにきてモラルハザードともと れる不祥やトラブルが立て続けに起きている。

 ある裁判が横浜地裁川崎支部に提起されたのは7月2日のことだ。
原告は神奈川県内の 男性で、被告は新宿事務所。
訴状に従えば、事の経緯は次のようなものだった。

 昨年夏、消費者金融などで過去にたびたび借り入れをしていた男性は、フリーダイヤ ルで新宿事務所に電話し、まずは指定された日時に京急川崎駅近くの貸し会議室で新宿 事務所所属の司法書士と面談した。
 アコム、アイフルなど完済先の4社を挙げるととも に、「ご依頼書」を作成するためタブレット端末に署名、その場で司法書士は完済先4 社に取引履歴の開示を求める通知をメール送信した。

 その後、10月頃になり男性は新宿事務所と電話で連絡をとった。
引き直し計算の結 果、過払い金が少額なため経費などを差し引くとわずかしか戻らない旨を告げられ、男 性は依頼しないことを決めた。翌年3月初旬にも電話で同様のやりとりがあったとい う。

 それからしばらく後、意外なことが判明する。男性にはほかに債務の残る借入先が2 社あった。
そこで3月末、男性は弁護士に債務整理を依頼することにした。過払い金を 債務整理に充てられないかと考えた弁護士は、前述した完済先4社に対し取引履歴の照 会をかけた。
すると、いずれからも返ってきたのは和解済みとの回答。請求に基づき一部を返還しているため、両者間に過払い金の債権債務は存在しないとされたのである。

 では、誰が男性にかわって返還金を受け取ったのか。
4社の回答によれば、いずれも 振込先は新宿事務所だった。
弁護士の照会に対し、新宿事務所は前述のご依頼書や請求 書兼明細書、完済先との和解書などを郵送してきた。

男性にとっては初めて手に取る書 類ばかりだった。請求書兼明細書によれば、返還金を上回る報酬や経費が発生したた め、男性に戻るお金はゼロになったのだという。納得がいかない男性側はたまらず裁判 に訴えた。

 面談や電話のやりとりがあった時期などについて、男性と新宿事務所との間で主張は 概ね一致している。
裁判において新宿事務所側が反論の柱とするのは、2度の電話連絡 で男性から返還請求の手続きを進めることについて承諾を得ていたという点だ。
ただ し、その客観的証拠は直近において提出されていない。請求書兼明細書など重要書類が 新宿事務所内に留まっていたのは、男性から同居家族に内緒にしてほしい旨を要請され ていたためだとしている(裁判で男性側は否定)。